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危険な改造

ブラックダイヤモンド社(以下BD)のワンタッチアイゼンのトーベイル(つま先の固定金具)をグリベル社アイゼン用のトーベイルに交換する人がいるらしい。特に細身でフィット感の良さそうなSPベイルに交換する人がいるようなのだが、実は私も他所でそれを見かけて試してみた口で、その結果アイスクライミング中にトーベイルが抜けてアイゼンが外れる事態になったのでここでご報告。

もともとこの手の改造は完全に自己責任で、それで事故が起きても誰にも文句は言えないし、化けて出るべきではない。でもできれば何事も無いに越したことはないので、私の結論としてはこの組み合わせは非常に危険なので絶対にやめたほうがいいと言っておく。

各社のワンタッチアイゼンのトーベイルをはめる穴は普通楕円で、ベイル側は棒の端がつぶされて、楕円の形と合ったポジションでだけベイルが抜き差しできるようになっているものが多い。つまり入れた角度とその180度以外、つまり通常使用される角度では抜けない仕組みなわけだ。だがグリベルアイゼンのトーベイルはBDアイゼンのトーベイルよりだいぶ細い。しかしBDアイゼン(今回試したのはサイボーグプロ)のベイルをはめる穴は当然だが自社のベイル用に太く、グリベル用の細いベイルではどの角度でも抜き差しができてしまう。つまりBD社アイゼンにグリベル社アイゼン用のトーベイルをはめると、ベイルの抜け止めが機能しなくなるのだ。

それでも実際に着けてみると、見た目はグリベルのベイルのほうがBDのベイルより穴に深く入っているので、「これだけ棒が深く入っていればそうそう抜ける事はないだろう」と、うっかり考えてしまいがちなのだが、実際には靴に横方向や捻りの力が加わったりすると、ベイルが広がって抜けてしまう事があるようだ。

人によっては「アイゼンの調整が緩かったのでは?」と思うかもしれないが、それまでに何度か調整を繰り返して安定した後だったのでそれはないと言える。それに経験上、人の体重がかかれば、相当うまく調整できたアイゼンでも使用中に軽いズレは起る。雪山で濡れた状態で装着していればなおさらだろうし、アイスクライミングであれば体重に加えて蹴りこみの衝撃も加わる。

そのアイスクライミング中に外れた時の動きを思い出してみると、モノポイントにしていた事もあって靴に若干捻りの力が加わったのだと思う。それはそれほど強いとは思えない力だったが、それでもベイルの外側がアイゼンの穴から抜けてアイゼン全体が外れた。

しかも踵が先に外れた場合と違って、フロントを固定するトーベイルが先に抜けると、いきなり蹴りこみも立ちこみも出来ない状態になる。トーベイルにユーロベイル(ストラップを通せる環の付いた細い金属板)があれば、こうしたときにいきなりの脱落を防いでくれる効果があるが、ユーザーによってはユーロベイルを邪魔として外してしまう人もいる。もしユーロベイルを外した状態で最初にトーベイルが完全に抜け落ちてしまったら、当然トーベイルはどこかに落ちてしまうから、その場でセルフをとって強引に嵌めなおす事も不可能になる。もしそれがいわゆる本チャンの最中だったら… どうなるかは考えるまでもないと思う。
最近のBD社のアイゼンはユーロベイルを省略しているが、それは前述した抜け止めに自信があるからではないかと思う。だからこそその抜け止めを無効にしてしまう改造は怖い。

実際には靴との相性やルート内容の違いなどで、今までたまたま問題なく使えている場合もあるかもしれないが、トーベイルの抜け止めが無効になる時点で、この組み合わせは危険でやるべきではないと考えたほうがいいと私は思う。

※写真–ソロだったんで、急遽アバラちゃんで降りるはめに…

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