最近、黒目を大きく見せるカラーコンタクトレンズがやたらとに流行っていますが、現状では虹彩の部分(茶色の瞳なら茶色いところ)まで黒く見えてしまう製品が多く、そうしたものは人物写真的に非常に良くないので私はお勧めしません。

人は本来あるはずの虹彩がない真っ黒な瞳を見ると、この世のものとは思えない不気味さを感じます。SFドラマやホラー映画でもこの手法はよく使われます。

そもそも人間の黒目の直径は0歳児から老人まで、男女も関係なくほとんど同じと言われます。
人でも動物でも子供が可愛く見える理由は、小さくて丸っこいものを庇護したくなる本能からきていると言う説があり(ぬいぐるみも同じ)、人間の子供も黒目は大人と同じ大きさなので、それを基準にすると子供の顔は大人より小さく見える(実際に小さいし)。逆に顔のサイズを基準にすると子供の黒目は大人より大きく見える(実際は同じだけど)。

詳しい事情は知りませんが、コンタクトで黒目を大きく見せたら、錯覚で顔が小さく、しかも子供みたいに可愛く見えるのでは? と考えた人がどこかにいたのかもしれません。

この黒目が大きいと顔が小さく見えるとか可愛く見える(かもしれない)という現象、つまりベビーフェイス化現象(勝手に名付けた)を狙って、写真を撮る場合に黒目コンタクトを使う人が増えたわけですが、レンズで黒目だけを大きくしても、白目の面積や顔や体全体のバランスが違和感を生んだり、虹彩がはっきりしない不気味さがあり、撮れた写真は違和感のあるものになりがちです。

しかし使っている本人は「可愛くなるはず」という暗示にかかっているので、出来上がった写真を見ても違和感を感じない事があります。そういう方は指摘してもなかなか納得してくれないのですが、恋人やファンならともかく無関係で冷静な第三者からは、良くても「なんか変だな」、悪くすると「よくわかんないけど気持ちわりい」と思われると思ったほうが無難です。

文化にもよりますが、人間が他の人間の顔を見るときにまず見るのが目です。人物写真の基本のキは目にピントを合わせる事です(距離差がある場合は一般的に手前の目)、それもまつ毛ではなく黒目に合っていなければピンボケと言われるぐらいシビアです。それぐらい黒目は見る人にとって「気になるパーツ」なのです。

不気味な異星人顔になったり不自然に受け取られるリスクを承知で、どうしても黒目コンタクトが使いたいという方は、実際に着けて上からの照明や横からの照明でも虹彩がしっかりと見える製品を選ぶべきです(一つの角度で良さそうに見えても別の角度では染料の影が落ちて黒く潰れて見えてしまう場合があります)。

また虹彩の周囲、つまり白目との境界がくっきりとしたものも見る側に強い違和感を与えます、本来の境界は少しぼやけているためです。もしそこに配慮した製品があればそうしたものを選ぶべきでしょう。