#11

身近な秘境の自然やらクライミングやら音楽やら映画やら諸々を書くと思います。

カテゴリ: クライミング

このところ急速に細くなってきたメインロープ。軽いは正義のクライミングでは非常に重要な技術革新ではあるのだが、使う前にちょっと注意を。

二月か三月のアイスクライミングでの話。新調した7.9mmロープをダブルで懸垂下降。数値上は十分この細さにも対応しているはずの某有名ビレイ器を使ったところ、滑って超怖かった(アイスなのでロープが濡れてた&ほぼ新品&そのときの体重が85kgという三十苦もありの……)。

いろいろ小細工をする余裕も無く、両手握力全開でテラスまでなんとか誤魔化し、残りはイタリアンヒッチに変えて降りる。対応の数字だけを見て事前にマッチングのテストをしなかったのも悪いのだが、「いやあ今更だけどイタリアンヒッチって絶妙な制動だわ~」とか思いつつ、ロープが痛むので後で小径ロープに強いギアに買い直した。ちなみにその7.9mmのロープ。もちろんUIAA規格をパスしたダイナミックロープだがかなり柔らかい。柔らかいと取り回しは良いのだが、いかんせん小径で軽い事もあってか、とにかくいろんな物によく引っかかる。下降のためにロープを投げると、途中に引っかかった分が引っ張っても何しても落ちてくれない。(9mmならちょっと振れば落ちるのに)

岩の溝(て言うかシワ?)、超細い小枝、そして苔!。とにかく少し出っ張っていれば何にでも引っかかり、引っ込んでいれば入り込む。半端な傾斜の所では最初の一発で上手く投げ落とさないと大変で、もし途中に草付きがあったら絶対引っかかる事請け合い、軽いから太さで2mmも無いような枝にまで乗っかってしまい、落とそうとして下手に引っ張ると枝に巻き付いて絡んでしまう。
でさっきイタリアンヒッチに救われた。と書いておいて何ですが、その結果のキンクがすさまじかった! いやあ凄い、知恵の輪か!ってぐらい凄かった。ごまかしごまかしあと少しで地面に到着ってところで、最初の件で用心してバックアップに入れたシャントのところでロープがロック。それがまあなんとつま先が地面に着いた瞬間!(笑)。

クライマーなら想像できると思いますが、同じ宙づりでも命に関わりはないものの、見た目がバレリーナでしかも傾斜は出だしが一番キツいから登り返しにくかったり、他に誰かいたら確実に爆笑もの。あと50cmも下がれればいいのにぃー!。でとっても苦労してなんとか解除。たぶん細くてももう少しロープが固かったらここまでにはならなかったんじゃないかとは思うけど、柔らかいほうが使いやすい部分もあるしねぇ……。軽量化マニアで細いロープを考えている方、本番前に手持ちのギアとのマッチングをテストしといたほうがいいッスよ、いやマジで(^^;)。


先週の平日。今季の足尾松木沢アイスクライミングはこれで終了。平日だが近所の低山に行くと思われる日帰りハイカーを二組見かけた。麓はすでに春の様相で、わずか一週間前には干上がってところどころの水たまりとなっていた川は、雪解け水で見事な流れに戻っていた。先週水たまりにうじゃうじゃと閉じ込められていた魚たちはうまく逃げられただろうか? いつも写真を撮りながらで、どうしても登るのか撮るのかどっちつかずになってしまうから、今回はアイスシーズン最終日ということで、撮影はなるだけ控えてアイストレメインにした。

当初今年は例の冷え込みのおかげで一週間ぐらい長く登れるかと思っていたら、三月に入って関東は二日連続で非常に気温の高い日があったためか、通常ならシーズン終わりごろの二月の末でもあれだけ状態が良く太かった松木沢沿いの氷瀑群は、もともと特に太いヤツだけを残してその後一週間で実に綺麗に跡形もなく消えていた。これでは終了は結果的に例年と同じかわずかに早かったかもしれない、平地の気温の変化に簡単に左右されるのは標高の低いアイスゲレンデの宿命ではあるが、今季はさすがに極端だ。

そのまだ残っていた氷瀑もヒョロヒョロで登るには厳しい状態に見えたのだが、それでも探してみればウメコバ出合の近所の、一日中日の当たらない氷瀑が、遠目にわりと良い状態に見えたので、そこで最後の氷を楽しんだ。ただこの氷瀑も下段はなかなか良かったものの、上段は薄くて最上部はすでに浮きはじめていた(360度画像で私の乗ってる辺りね)。

それにしても今季の気温の激変はなんなんでしょね。前の週はまだほぼ凍っていたウメコバ出合前の川床も、その後一週間ですっかり元の川に戻っていた。大きいほうの流れは雪解けで水量も多くなっているので、飛び石がうまくつながらず、はだしで渡るはめになり、「イッテー!!」と叫びながら渡ったり、冷たいことまあ。(帰りはザン靴で走って?突破しましたが)

それにしても、まあなんて言うんだか。今季のまとめとしては「体重戻さなきゃ…」につきるか。当社比10kg以上オーバーはいかんですよやっぱり。指の問題をカバーして、何とかクライミングを続けるべくアックスを握りやすいハンドルタイプに換えた。にもかかわらず前腕がばんばんパンプする。

しかも上手くいかない事はこれらだけではなかった。この日午前中のアプローチでは何事もなかったものが、午後になると突然花粉が総攻撃を開始した。冒頭のTHETAの360度画像は帰りの懸垂下降直前で、目は痒いわ、くしゃみ酷いわでボロボロのワタクシです。念のため持ってきていた薬を飲んで、ちょっと効いてもまだそんなザマ。

※ちなみに冒頭の360度フォトをあまりご存じない方向けに解説しますと、懐かしのウルトラマン系ポーズ(?)を決めているわけではなくて、突き出して大きく写っている手にカメラを握ってシャッターを押すと、カメラ本体は写らずにこうなります。こういう場合は壁側にカメラを持って撮ると、画面のほとんどが横の壁と人物の大写しになり、臨場感を出すには良い場合もありますが、多くは誰がどこで何をしているかさっぱりわからない写真になりがちです。そのため特に意図が無いなら、片側が壁の場合は無理のない範囲でカメラを壁から離すほうが吉と出る場合が多いのです。RICOH THETA等の360度カメラでこの手の自撮りをする場合はご注意を。

今年は寒いから松木沢の奥にある某滝が良く凍っているかもしれないので、すでに時期が遅いがとりあえず行ってみた。

松木沢をウメコバ沢の出会いよりさらに奥へ入るとなると、水位次第では渡るのが面倒な川があるのだが、例年と違って今回は全部氷の上を歩いて渡れた。ここでこんな遅い時期にこれだけ川が凍っているのは珍しいというか、私が知っている範囲では初めてだと思う。

平日だがここまで来る途中にはアイスクライミングのパーティも入っていて、手前の氷瀑までの道には結構立派なトレールが残っていた。ここの氷は例年二月も終盤になれば解け始めているので、それほど多くの人が入るわけではないのだが、今年は寒気が次々に来たからだいたい一週間から10日程度シーズン終わりが遅くなりそうで、皆喜んで飛んできているようである(笑)

凍った川と面倒な砂防ダムを越えてお目当ての滝がある沢の出合まで付くと、遠目に見える滝は思った以上にちゃんと氷瀑になっていた。
ここは登攀対象になっている他の松木沢沿いの氷瀑とは違って、日中は日の当たる場所にあるから例年なら良い氷は期待できない。見た感じ難度の点でも登攀対象として特に魅力はなさそうなわりに、手前に深い渕があって渡れないわ、最後にデカいチョックストンはあるわで、そもそもそこまで来るのがだいぶ面倒だし、そんなこんなでガイドブックにも載ってないわけで、たぶんほとんど登られていないと思う。私も今回登るほうはほぼ考えていなかった。

が、時間が余ったら手前の氷瀑で遊ぶつもりでギアは持っていた。そんな時に相手が見た感じで登れそうなレベルまで凍っているのを見ると、写真家の自分を押しのけてクライマーの自分が欲を出す。と言ういつものジレンマに陥るわけだ。

そんなわけで、いざ氷瀑の取付きまで出るとなると、手前の複数の渕を超えなければいけない。だが水量も多く完全凍結は期待できないだろうから、簡単には越えられないはずで、夏場は脇の面倒な尾根を巻いて懸垂下降で降りると何かで見た憶えがある。だが松木沢周辺の尾根は実は相当面倒な場所で、出来ればそれは避けたいのが本音だ。そこで「この冬ならうまくすると渡れないだろうか?」と欲を出した。

とりあえず夏なら浅い川床のはずの場所を恐る恐る歩いていくと、最初の深めの渕が出てくる。そこは向かって左側にだけ30cm程度の幅の通路のように細く雪が乗っていたのだが、その雪の上によく見ると穴が一つぽっかりと…

まあ見るからに先行者の踏み抜きかと… やはり同じことを考える物好きは他にもいたのである。しかしそこを通らないと上の渕にはいけないので覚悟してソロリソロリと踏み出すと、「行けた!」と思った瞬間ズブリ! 哀れ左足は膝まで水中に、本体は一緒に落ちないように咄嗟に手前に倒れて、太ったエビ(見たことないが)のようにズリズリと引き下がる…。

何年振りかで新調した”一流だが型遅れセール品のイターリア製冬季用登山靴の優秀な防水ジッパー” のおかげで、水没した左足はラッキーなことにソックスの上を少し濡らした程度で済んだ。
さてこの渕の左右は切れ落ちた壁なのでここをこのまま突破したければ、左の壁を”へつる”しかないのだが、足場はあるものの手で使えるホールドがあるかは未知数だ。夏場に確認した記憶はない、と言うか本当は忘れた。

出来れば雪の乗った不安定な足場のへつりはやりたくなかったので、自分が踏み抜いた氷の穴に試しにストックを突っ込んでみると全然底がない。同じ底がないでも、もうちょっと下にありそうなのと、全然なさそうなのとでは怖さが全然違う、これはたぶん後者だ、うんなんとなく。落ちるとマジでやばいパターンである。

それにそもそも、無理をしてここを超えても、まだもう一つ上の渕が通れるかも分からないわけで、もしここを抜けてしまって上がダメだったら、このへつりは戻れるのだろうか? すでにバンバン日が当たっているからどんどん状況は悪くなる。帰る頃にはへつりに至る部分の氷が緩んでたりして? もしかして「行きはよいよい帰りはなんとか…」のパターンではないかいな?

そう思って機材を背負った写真家の私は諦めて一旦下がったのだが、クライマーの私が目先の欲に勝てず引き返しへつりを決行、体は一つだから行動は欲望の強い方が勝つ。持論だが『クライマーは基本的に欲望に忠実な人達』なのである。

正味3mちょいかそこらの短いへつりを、三脚から登攀道具一式まで入ったザックを背負ったうえに、小型ミラーレスカメラ二台にレンズ四本が入ったカメラバッグをぶら下げたまま緊張して終える。一息ついて「フリークライマーで良かったぁ~」と心底思った次第。

ちなみに『フリークライミングは登山の基礎である』も私の持論だ。これを言うと歩き専門の人の反発を招きやすいのだが、別にフリークライマーが偉いとかそういう言う話ではない。たとえ二本足の歩きだろうと山である以上はバランスを崩しやすい場所や鎖場があったりする、滑りやすい場所なら標高、岩場、積雪等々関係無くそれこそどこにでもある。そんな落ちそうな場所で落ちない、こけそうな場所でこけないための技は、実はフリークライミングの中にすべてある。嗜んでおいて得はあっても損は無いと言うわけである。

※写真はちっこくて良くわからんと思うけど、へつった後上流側から。右の岩沿いの雪の手前の穴が先行者の踏み抜いた穴、奥は私の踏み抜いた穴。結局その上の岩の段に乗って壁沿いをへつった。

そんなわけだが、結局その上の渕は越えられそうもなくて、もう一回ここを戻って尾根からの迂回を試みる私であった。あったのだが…(以下お察し)

肉

豪州牛の赤身でもこれだけ油が出てくる。ちなみに内臓ストロボ光をアルミホイルで曲げて壁バンしただけ。もう少しでグロになるギリギリのシズル感?

お久しぶりでござんす。夏場いわき市に行ってきたり、先日は相変わらず足尾に入ったりとそこそこ書けることはあるのですが、まとめるのが大変なのでそのうちに…。
で本日のお題。昨今クライマーといえば、世代によって頭に思い浮かぶイメージがずいぶん違うはず。たぶん60代後半~70代くらいの人は小太りで髭面の小さなオッさんとかを想像するかもしれませんが、いまの優秀なクライマーは、みんな吹けば飛びそうなぐらいヒョロヒョロに痩せている。

筋骨隆々に見えても、良く見れば筋肉が付いているのはほぼ肩と背中だけで、女子の場合はかなり筋肉がついてみえるけど、それも基本的には肩と背面中心。

最近はフリークライマーに限らず、アルパインクライマー(山の壁を登るいわゆる”登山家”)もトップクラスはフリーでも高レベルだから、同じく痩せている。人工壁を登ろうが、山の壁を登ろうが、それこそ歩く山だろうが、登るという行為は常に重力に逆らうんだから、体が軽いほうが有利なのは当たり前なのであります。

ついでに言うと、アルパインクライマーの中でもヒマラヤなどの高所が舞台の高所クライマーも、あるだけで酸素を無駄に消費する肉は少ないほうが有利として、遠征前は激しいクライミングをやめて筋肉を落とす人もいる。
「寒いんだから脂肪が多いほうが…」と考えるのは、昨今のスピードイコール安全の運動量の多い速攻登山に限っては間違いで、脂肪は余計な重りと考えるのが普通。運動の燃料に脂肪をつけるマラソンランナーがいないのと似たような感じか。

そういうわけで、現役のクライマーたちは日々体重維持や減量に涙ぐましい努力をしてるのである。ワールドカップ優勝でおなじみ、世界的コンペクライマーの安間佐千氏、過去日本人最強のアルパインクライマー山野井泰史氏、両氏ともベスト体重はたしか50kg台だったはずだ。

元祖世界最強日本人フリークライマー平山ユージ氏は、例外的に体重が重い事で知られたが、それでも一番重かった頃で70kg程度だったと思う。私個人は、高レベルを狙うクライマーは、身長が何mあろうと体重は60kg台までがベストだろうと考えてる。クライマーにとって体重が重くて良い事はまったくない。万年70kg台だった私はずっと故障に泣かされた。

そういえばもう10数年以上前の話になるが、今やベテランのトップフリークライマーW氏がまだ高校生だった頃、当時各牛丼チェーンから次々に登場していた豚丼が結構うまいという話を取材の合間にしたら、彼は開口一番こう言った。

「それ、脂ありますか?」

食いたい盛りの男子高校生でもこれである。フリークライマーにとって肉と言えば、味どうの以前に脂が少ないかどうかの方が、はるかに気になるのである。

そこからさらに昔に遡ることかなり前、まだ自然の岩でコンペを行っていた頃、選手の宿舎になった宿が、「スポーツマンなら肉が好きだろう」と考えたのか、気を利かせて肉メインの料理を出したところみんな残した。なんて逸話もあった。
当時の世間一般の常識と、フリークライマーの常識があまりにもかけ離れていたが故の事故だった。ちなみに最近は炭水化物の摂取をコントロールしつつ(本番前とトレーニング期では摂り方が違う)、肉類をガッツリ食べる人も結構いるから、当時みたいに極端なことにはならないと思う。

そうは言っても、減量期など無駄な油の使用を減らしたい時はやっぱりある。そんなクライマーの端くれの端っこからすでに転げ落ちてしまったオジさんである私が、同じく減量に悩む世間の皆さんに、オレ流の「油を使わない”肉と野菜の炒め物”」の調理法を伝授しちゃるべ。(まあなんと長い前フリだ。)

まずは当然、焦げ付かない加工のフライパン、そして必ず蓋を用意。ガラスで中が見える蓋ならベスト。薄い肉をフライパンにそこそこ丁寧に敷き、火は可能なかぎりの弱火、←これ重要。そして蓋をして待つ。とにかく待つ。じっと待つ。すると、もともと肉の中にある脂が熱で溶けて油として滲み出てくる。普通、肉ならばよほどの赤身でもこうすると油が出てくるものだ、これが普通の火加減だったら焦げ付いてしまうだろう。

後は肉厚と出てきた油の量に応じて火加減を調節しながら焼き、熱を回すために蓋をして火が通るのを待つ。すき焼き用の薄切り肉であればさして時間はかからないし、肉が硬くなるとか縮むとかもあまり気にしなくていい。てか細かいことは気にするな、デブるのとどっちがマシだ、よく噛みゃいいじゃないか(笑)。

そして火が通ったら野菜を投入。しつこいようだが肉が硬くなるのがどうしても嫌なら、火が通ったところで脇にあげておくのだ。野菜を炒める火かげんは、肉から出てきた油の量次第だが、焦げ付きそうに見えたら少し塩を振る。わずかな塩をふるだけで、浸透圧で野菜から水分が出て、焦げ付かないで火が通る。事実上の蒸し焼きだから当然はじめは蓋をしよう。水が多すぎると本当の蒸し焼きになって、炒め物のパリパリ感が完全に無くなってしまうから、もし野菜から水が出すぎたら捨てるか蓋を開けて飛ばしてしまう。可能であれば後半は少し火を強めにするといい感じに仕上がることが多い。

ちなみに、私はやらないが塩の代わりに実は砂糖でもいいらしい、どちらにしても、量は後の味付けを考慮して決めるといい。

以前は私も、少量の水を足して半ば蒸し焼きにしていたのだが、パリパリ感がなくなるのが嫌で、水を減らす方策はないか?と考えてたら、好物のすき焼きを作るときに、野菜から大量の水が出てきて割下が薄くなって困ったことを思い出して、この方法に行き着いた。世の中何が役に立つか本当にわからないものだぴょんでござるだっぺ。

ストラップ1

他にやってる人がいるかは知りませんが、この結び方は知識として紹介しておきましょう。バックルが割れたり無くしたときにも使えるでしょう。緩んだりすっぽ抜けないように結ぶにはそれなりに慣れが必要で、推奨はしませんが、もしやりたい方はくれぐれも自己責任で、これでカメラを落としても私は一切関知しませんのでそのへんよろしく。

簡単に言えば、テープ結び(リングベンド)で、カメラの吊り環に直接テープを結んでしまう。テープがしっかり結べる素材で、結び目の緩みをチェックする習慣さえつければ固定は強力。ただし長さは調節できないが、これはネット界隈で俗に言われる三重折の「プロ結び」と同様。

テープ結びは平たいテープ同士を連結するときに使う結び方で、クライミングでは主に一本のクライミング用テープの両端を結んでテープスリングと呼ばれる輪を作る時に使われる。昨今はソウンスリング(テープをミシンで縫って連結した輪)が主流なので、若いスポーツクライマーにはこの結び方を知らない人もたまに存在するが、山ではダブルフィッシャーマンズノットやプルージックなどと同様に、知っていないとまずい基本的な結び方の一つと言える。

この結び方は表面に十分な摩擦力がある素材でできたテープで使えるが、一応注意だけしておくと、ダイニーマ(スペクトラ繊維)のように使ってはいけない素材も存在する。メリットは結び方が非常にシンプルで、カメラをバッグに仕舞ったときに、硬いバックルがカメラやレンズを擦ることが無い。バックルの破断を心配する必要がまったく無い。ベストの状態であれば固定が非常に強固なことなど。

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この二本のテープを一つのリングベンドで結ぶことで連結してしまう。カメラ側のテープが痛んだら、そちらだけ交換できる。

おまけでもう一つ応用編。

二本の別々のテープを一つの結び目で連結した結び方。キヤノンのEOSのように吊り金具の折り返し部分でストラップのテープが痛みやすいカメラの場合、この結び方だとカメラ側のテープが痛んできたら、そのテープだけを交換できる。

テープは強く結べばそれだけでそれなりに痛むからどちらにしろ寿命はあるのだが、ストラップのテープを直接結ぶよりは長く使えるような気がする。

 

 

これが出来上がり。

これが出来上がり。

デメリットとしては、三本のテープを結ぶので、結び目が大きくなることがあげられる。他にも少しでも緩んでいると解けやすいはずなので、最初に結び目を入念にしっかりと締めて、その後も使いながら締まり具合を確認したほうが良い。滑りやすいテープでは結べても滑って抜ける可能性がある、硬いテープでは結目がしっかり締まらず抜ける可能性がある。ストラップ側テープを内側に通すのか、外側に通すのかで強度が変わるかもしれない。などなどを正しく理解して使うかどうかを決める必要がある。

 

 

三枚目の写真はそのバリエーションで、カメラの吊り環側、三枚重ねのテープの真ん中に、ストラップ側テープの末端が挟まれてブラブラしない結び方。この結び方は実は結構難しいうえに強度も何とも言えないが、もし人間がぶら下がるならこれは絶対に使わないが、カメラなら使うといった感じだろうか(そもそもカメラ用テープじゃそこまで強く無いわけだが)。もしやるとしてもテープ結び(別名:リングベンド、テープヒッチ、テープノット、ふじ結び、等)を検索して、よく研究したほうがいい。通常のテープ結びでもそうだが、この結び方の末端(端で余ったテープ)は長めにとっておくこと。私はテープ結びでもバックルを使う場合でも、余った末端を熱収縮チューブを使ってまとめている(ただし収縮固定はしない、増し締めができるし)。

ストラップ4

ぶら下げるとこんな感じ。少し腹が出て見えるかもしれないが、食べ過ぎたのは最近続いたストレスのせいなので、ストレスを減らすために寿司を食べたからもう大丈夫だ。

ちなみに、私が近年愛用しているARTISAN&ARTISTの長さが自由に変えられるストラップ(Easy Slider ACAM-E38)は、テープ部分がとても短いので、カメラ直付けではテープ結びができず、二番目に紹介した連結法で結んでいる(もうちょっと長くならんかね、これ)。

もひとつちなみに、私は自分で結んだこの結び方なら、たとえライカであろうとも、ストラップを持ってハンマー投げの要領で振り回せる度胸があるが、普通のバックル式だったら絶対やれない。(あるのは度胸で強度とは言ってないぞ〜)



 16年3月中頃。全景を見せようとすると迫力がイマイチ…上流はミックス(雪と岩が混ざっている)部分のほうで、上流を向いて右側、左の突起の向かいに聳えるのが中央岩峰。冬季にアイスクライミングの対象となる滝はまだ少し上流で、ミックス部分の中にあり見えないが、この時期には融けて崩れている。

最近は松木渓谷と呼ばれているようだが、若い頃から「松木沢」と呼んでいたので、そのほうが私にはしっくりとくる。かつては冬のアイスゲレンデとして名高く、夏もトラディショナルな山岳登攀の入門ゲレンデとして、北関東近県のクライマーには良く知られた存在だった。

この渓谷に流れ込む沢の中で、ウメコバ沢は通常クライミング対象になる沢としては最も奥に位置する最も大きな支流だ。沢に入れば両岸に登攀対象になる岩壁と岩稜がドカーンと聳える日本離れした異景なのだが、わずかとはいえ入り口の細い滝の周辺を登攀しないと入れないことから、クライマー以外は特に訪れる人の少ない沢だ。というか、そのクライマーの間でも今の松木はあまり人気があるとは言えないエリアである。

16年2月後半頃のウメコバ沢出合、暖冬で雪も氷も少ない。左右は壁、正面には7m程度の滝があるが、この場を超えないと素直に沢には入れない。この滝は現在フィックスが架かっているものの、岩がとても脆いので私は岩が出ている時はここを登らず、帰りに持参のロープで懸垂下降する。登りは私の左後ろに見える水が落ちている左脇からグルッと巻くのが比較的楽だ。(山岳グレードで3mのチョロい三級→二級のちょい怖いへつり(氷があるとヤバい)→三級+か四級で3m程度のチムニー瞬間芸)

時代の趨勢が山岳登攀からフリークライミングへと移って久しい現在。脆い岩が多く昔懐かし山岳登攀の要素の濃い松木渓谷の岩場を訪れる人はそれほど多くない。しかもン十年前までは一番アプローチの近いジャンダルムのすぐ手前まで車で入れたのだが、今は当時よりも1時間ちかく手前の銅親水公園脇に電波式ゲートができてしまったため、訪れる人は余計に少なくなったようだ。

そんなわけで、マイナーな存在のアルパインクライマーの間でもマイナーな場所なので、ここがどんなところかを自分の目で見た人は相当限られるだろう。
であれば雰囲気だけでもどうぞ…ということで、冒頭にウメコバ沢の全天球写真を公開(たぶん世界初?)。左右の岩場の見えている部分の奥に、尾根に向かってまだまだ岩稜が連なっているのだが、視点が低いのでわからないところが残念。

日本全国津々浦々には、道路脇の小さな岩にすら名前がついていて、それをかなり無理ゲーで観光スポットにしているところがたくさんあるというのに、ここの有り余る岩と特異な風景はクライマーを含めたごく限られた人々にしか知られず、何十年も堂々と…かつひっそりと存在している。

と言っても、ここまでの道のりが弛まない落石と崩落によるガレ場だらけで、年々崩壊が進んでいる状況なのだから、観光用に整備しようとしたら、よほどの大規模工事でもしないとどうにもならないのが実際のところだろう。
しかし主たる観光資源が庚申山周辺と銅山観光にほぼ限られたこの地において、これがこのままなのは、ちょっともったいない気がするのも正直な気持ちではある。(静かなここは好きなんだけど。)

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