#11

身近な秘境の自然やらクライミングやら音楽やら映画やら諸々を書くと思います。

などと書くと驚かれるかもしれません。
「(オプション等で)家庭用電源がとれるハイブリッドカーはキャンプに便利」と言われる事が多いからです。

ですがバッテリー容量が大きなPHVやPHEVを除く現状多く普及しているハイブリッドカー(私が知るのはトヨタの場合ですが)で電源を使いつづけると、バッテリー容量が減ってきた時に自動でエンジンがかかり充電を開始します。これ考えてみれば当たり前なんですが、

結構、うるさいんです。

アルファードハイブリッド(20系)の場合、充電時はアイドリングより少し高い回転でエンジンがまわるので、夜間はかなり気になります。特に忘れた頃に突然エンジンがかかるので、周囲の迷惑を考えると思うように使えません。これではキャンピングカーでおなじみのサブバッテリーのほうが、容量が無くなれば電気が止まるだけでエンジンはかかりませんので都合が良いのです。

ハイブリッドカーの電源はシステムをオンにしておけば、燃料が無くなるまではほぼエンドレスで電力を多く必要とする家電も使える便利さがあります。これは通常のサブバッテリー(充電が遅い)やポータブル電源(出力や容量が小さい)にはない長所で、エンジンが作動しても周囲の迷惑にならない環境であれば、ハイブリッド車は災害時等の電源供給車として大きな威力を発揮するでしょう。(アイドリング禁止条例等はまた別の話として)

ですが、ことキャンプの夜間のようなエンジンが始動して欲しくない環境ではそうはいかないわけです。アルファードハイブリッド20系の場合、AC電源供給時はあまり大きな電気を使わなくても案外早くエンジンがかかるので、使える容量はあまり大きくないように思います。電源使用時に使えるバッテリー容量を大きくして、エンジンがかからない「使い切りモード」みたいなものを付けてくれると、様々な用途により便利に使えると思うのですが……。

これは余談ですが、ロケに行く道で機材のバッテリーを充電しながら走ろうと思うと、休憩でエンジンを切った時、次回始動時にもう一度AC供給のスイッチを押さないと給電が開始されません。
なのでスイッチを入れ忘れて走り出すと、目的地に着いた時にカメラのバッテリーが充電されていないという悲劇に自動的に見舞われます(笑)。

私はこの悲劇を回避する意味と、バッテリーの充電回数を減らすために、一度モバイルバッテリーに充電して、そこからカメラ用バッテリーに充電する事が多いです(USB供給の充電器は残念ながら海外メーカー頼りですね、ソーラーパネルからでも充電できるなど非常に便利にもかかわらず)。
二度手間ですが、長距離の車移動が多いカメラマンには現状のシステムではこれが正解かなとも思います。日本メーカーの物作りがマスに拘りすぎて、かゆい所に手が届かなくなっているのは少し残念です。

大型台風が近づいているので、一応書いておきますね。 どこの家にでもある物で、懐中電灯やヘッドランプを簡易ランタンにする方法です。必要なのは最近すっかり悪者にされている白いレジ袋。

この方法はカメラマンとキャンパーには知っている人がそこそこいると思います。 白いレジ袋をふわっと適当に膨らましてライトの前にかぶせるだけです。これで光が周囲に広がり、懐中電灯やヘッドランプそのままよりは大分使いやすいランタンになります(光量は大幅に下がりますが、よほど暗くなければ、しばらくすると目が慣れてきます)。

注意点として、レジ袋は燃えやすいため発熱するライトには使わないでください、発火の危険があります。 袋をランプ部分に密着させないように、 熱が少なそうでも念のため袋の口は塞がずに熱が逃げる隙間を作ったり、袋に小穴をあけて熱気を逃がすなど、とにかく熱には十分注意してください。
↓ちなみに最近では同じ理屈のヘッドランプにつける専用品も売られています。↓

 


先週の平日。今季の足尾松木沢アイスクライミングはこれで終了。平日だが近所の低山に行くと思われる日帰りハイカーを二組見かけた。麓はすでに春の様相で、わずか一週間前には干上がってところどころの水たまりとなっていた川は、雪解け水で見事な流れに戻っていた。先週水たまりにうじゃうじゃと閉じ込められていた魚たちはうまく逃げられただろうか? いつも写真を撮りながらで、どうしても登るのか撮るのかどっちつかずになってしまうから、今回はアイスシーズン最終日ということで、撮影はなるだけ控えてアイストレメインにした。

当初今年は例の冷え込みのおかげで一週間ぐらい長く登れるかと思っていたら、三月に入って関東は二日連続で非常に気温の高い日があったためか、通常ならシーズン終わりごろの二月の末でもあれだけ状態が良く太かった松木沢沿いの氷瀑群は、もともと特に太いヤツだけを残してその後一週間で実に綺麗に跡形もなく消えていた。これでは終了は結果的に例年と同じかわずかに早かったかもしれない、平地の気温の変化に簡単に左右されるのは標高の低いアイスゲレンデの宿命ではあるが、今季はさすがに極端だ。

20180312そのまだ残っていた氷瀑もヒョロヒョロで登るには厳しい状態に見えたのだが、それでも探してみればウメコバ出合の近所の、一日中日の当たらない氷瀑が、遠目にわりと良い状態に見えたので、そこで最後の氷を楽しんだ。ただこの氷瀑も下段はなかなか良かったものの、上段は薄くて最上部はすでに浮きはじめていた(360度画像で私の乗ってる辺りね)。

20180310aそれにしても今季の気温の激変はなんなんでしょね。前の週はまだほぼ凍っていたウメコバ出合前の川床も、その後一週間ですっかり元の川に戻っていた。大きいほうの流れは雪解けで水量も多くなっているので、飛び石がうまくつながらず、はだしで渡るはめになり、「イッテー!!」と叫びながら渡ったり、冷たいことまあ。(帰りはザン靴で走って?突破しましたが)

それにしても、まあなんて言うんだか。今季のまとめとしては「体重戻さなきゃ…」につきるか。当社比10kg以上オーバーはいかんですよやっぱり。指の問題をカバーして、何とかクライミングを続けるべくアックスを握りやすいハンドルタイプに換えた。にもかかわらず前腕がばんばんパンプする。

しかも上手くいかない事はこれらだけではなかった。この日午前中のアプローチでは何事もなかったものが、午後になると突然花粉が総攻撃を開始した。冒頭のTHETAの360度画像は帰りの懸垂下降直前で、目は痒いわ、くしゃみ酷いわでボロボロのワタクシです。念のため持ってきていた薬を飲んで、ちょっと効いてもまだそんなザマ。

※ちなみに冒頭の360度フォトをあまりご存じない方向けに解説しますと、懐かしのウルトラマン系ポーズ(?)を決めているわけではなくて、突き出して大きく写っている手にカメラを握ってシャッターを押すと、カメラ本体は写らずにこうなります。こういう場合は壁側にカメラを持って撮ると、画面のほとんどが横の壁と人物の大写しになり、臨場感を出すには良い場合もありますが、多くは誰がどこで何をしているかさっぱりわからない写真になりがちです。そのため特に意図が無いなら、片側が壁の場合は無理のない範囲でカメラを壁から離すほうが吉と出る場合が多いのです。RICOH THETA等の360度カメラでこの手の自撮りをする場合はご注意を。20180312b

180222a今年は寒いから松木沢の奥にある某滝が良く凍っているかもしれないので、すでに時期が遅いがとりあえず行ってみた。

松木沢をウメコバ沢の出会いよりさらに奥へ入るとなると、水位次第では渡るのが面倒な川があるのだが、例年と違って今回は全部氷の上を歩いて渡れた。ここでこんな遅い時期にこれだけ川が凍っているのは珍しいというか、私が知っている範囲では初めてだと思う。

平日だがここまで来る途中にはアイスクライミングのパーティも入っていて、手前の氷瀑までの道には結構立派なトレールが残っていた。ここの氷は例年二月も終盤になれば解け始めているので、それほど多くの人が入るわけではないのだが、今年は寒気が次々に来たからだいたい一週間から10日程度シーズン終わりが遅くなりそうで、皆喜んで飛んできているようである(笑)

凍った川と面倒な砂防ダムを越えてお目当ての滝がある沢の出合まで付くと、遠目に見える滝は思った以上にちゃんと氷瀑になっていた。
ここは登攀対象になっている他の松木沢沿いの氷瀑とは違って、日中は日の当たる場所にあるから例年なら良い氷は期待できない。見た感じ難度の点でも登攀対象として特に魅力はなさそうなわりに、手前に深い渕があって渡れないわ、最後にデカいチョックストンはあるわで、そもそもそこまで来るのがだいぶ面倒だし、そんなこんなでガイドブックにも載ってないわけで、たぶんほとんど登られていないと思う。私も今回登るほうはほぼ考えていなかった。

が、時間が余ったら手前の氷瀑で遊ぶつもりでギアは持っていた。そんな時に相手が見た感じで登れそうなレベルまで凍っているのを見ると、写真家の自分を押しのけてクライマーの自分が欲を出す。と言ういつものジレンマに陥るわけだ。

そんなわけで、いざ氷瀑の取付きまで出るとなると、手前の複数の渕を超えなければいけない。だが水量も多く完全凍結は期待できないだろうから、簡単には越えられないはずで、夏場は脇の面倒な尾根を巻いて懸垂下降で降りると何かで見た憶えがある。だが松木沢周辺の尾根は実は相当面倒な場所で、出来ればそれは避けたいのが本音だ。そこで「この冬ならうまくすると渡れないだろうか?」と欲を出した。

とりあえず夏なら浅い川床のはずの場所を恐る恐る歩いていくと、最初の深めの渕が出てくる。そこは向かって左側にだけ30cm程度の幅の通路のように細く雪が乗っていたのだが、その雪の上によく見ると穴が一つぽっかりと…

まあ見るからに先行者の踏み抜きかと… やはり同じことを考える物好きは他にもいたのである。しかしそこを通らないと上の渕にはいけないので覚悟してソロリソロリと踏み出すと、「行けた!」と思った瞬間ズブリ! 哀れ左足は膝まで水中に、本体は一緒に落ちないように咄嗟に手前に倒れて、太ったエビ(見たことないが)のようにズリズリと引き下がる…。

何年振りかで新調した”一流だが型遅れセール品のイターリア製冬季用登山靴の優秀な防水ジッパー” のおかげで、水没した左足はラッキーなことにソックスの上を少し濡らした程度で済んだ。
さてこの渕の左右は切れ落ちた壁なのでここをこのまま突破したければ、左の壁を”へつる”しかないのだが、足場はあるものの手で使えるホールドがあるかは未知数だ。夏場に確認した記憶はない、と言うか本当は忘れた。

出来れば雪の乗った不安定な足場のへつりはやりたくなかったので、自分が踏み抜いた氷の穴に試しにストックを突っ込んでみると全然底がない。同じ底がないでも、もうちょっと下にありそうなのと、全然なさそうなのとでは怖さが全然違う、これはたぶん後者だ、うんなんとなく。落ちるとマジでやばいパターンである。

それにそもそも、無理をしてここを超えても、まだもう一つ上の渕が通れるかも分からないわけで、もしここを抜けてしまって上がダメだったら、このへつりは戻れるのだろうか? すでにバンバン日が当たっているからどんどん状況は悪くなる。帰る頃にはへつりに至る部分の氷が緩んでたりして? もしかして「行きはよいよい帰りはなんとか…」のパターンではないかいな?

そう思って機材を背負った写真家の私は諦めて一旦下がったのだが、クライマーの私が目先の欲に勝てず引き返しへつりを決行、体は一つだから行動は欲望の強い方が勝つ。持論だが『クライマーは基本的に欲望に忠実な人達』なのである。

正味3mちょいかそこらの短いへつりを、三脚から登攀道具一式まで入ったザックを背負ったうえに、小型ミラーレスカメラ二台にレンズ四本が入ったカメラバッグをぶら下げたまま緊張して終える。一息ついて「フリークライマーで良かったぁ~」と心底思った次第。

ちなみに『フリークライミングは登山の基礎である』も私の持論だ。これを言うと歩き専門の人の反発を招きやすいのだが、別にフリークライマーが偉いとかそういう言う話ではない。たとえ二本足の歩きだろうと山である以上はバランスを崩しやすい場所や鎖場があったりする、滑りやすい場所なら標高、岩場、積雪等々関係無くそれこそどこにでもある。そんな落ちそうな場所で落ちない、こけそうな場所でこけないための技は、実はフリークライミングの中にすべてある。嗜んでおいて得はあっても損は無いと言うわけである。

※写真はちっこくて良くわからんと思うけど、へつった後上流側から。右の岩沿いの雪の手前の穴が先行者の踏み抜いた穴、奥は私の踏み抜いた穴。結局その上の岩の段に乗って壁沿いをへつった。

そんなわけだが、結局その上の渕は越えられそうもなくて、もう一回ここを戻って尾根からの迂回を試みる私であった。あったのだが…(以下お察し)

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