DSC0837豪州牛の赤身でもこれだけ油が出てくる。ちなみに内臓ストロボ光をアルミホイルで曲げて壁バンしただけ。もう少しでグロになるギリギリのシズル感?

お久しぶりでござんす。夏場いわき市に行ってきたり、先日は相変わらず足尾に入ったりとそこそこ書けることはあるのですが、まとめるのが大変なのでそのうちに…。
で本日のお題。昨今クライマーといえば、世代によって頭に思い浮かぶイメージがずいぶん違うはず。たぶん60代後半~70代くらいの人は小太りで髭面の小さなオッさんとかを想像するかもしれませんが、いまの優秀なクライマーは、みんな吹けば飛びそうなぐらいヒョロヒョロに痩せている。

筋骨隆々に見えても、良く見れば筋肉が付いているのはほぼ肩と背中だけで、女子の場合はかなり筋肉がついてみえるけど、それも基本的には肩と背面中心。

最近はフリークライマーに限らず、アルパインクライマー(山の壁を登るいわゆる”登山家”)もトップクラスはフリーでも高レベルだから、同じく痩せている。人工壁を登ろうが、山の壁を登ろうが、それこそ歩く山だろうが、登るという行為は常に重力に逆らうんだから、体が軽いほうが有利なのは当たり前なのであります。

ついでに言うと、アルパインクライマーの中でもヒマラヤなどの高所が舞台の高所クライマーも、あるだけで酸素を無駄に消費する肉は少ないほうが有利として、遠征前は激しいクライミングをやめて筋肉を落とす人もいる。
「寒いんだから脂肪が多いほうが…」と考えるのは、昨今のスピードイコール安全の運動量の多い速攻登山に限っては間違いで、脂肪は余計な重りと考えるのが普通。運動の燃料に脂肪をつけるマラソンランナーがいないのと似たような感じか。

そういうわけで、現役のクライマーたちは日々体重維持や減量に涙ぐましい努力をしてるのである。ワールドカップ優勝でおなじみ、世界的コンペクライマーの安間佐千氏、過去日本人最強のアルパインクライマー山野井泰史氏、両氏ともベスト体重はたしか50kg台だったはずだ。

元祖世界最強日本人フリークライマー平山ユージ氏は、例外的に体重が重い事で知られたが、それでも一番重かった頃で70kg程度だったと思う。私個人は、高レベルを狙うクライマーは、身長が何mあろうと体重は60kg台までがベストだろうと考えてる。クライマーにとって体重が重くて良い事はまったくない。万年70kg台だった私はずっと故障に泣かされた。

そういえばもう10数年以上前の話になるが、今やベテランのトップフリークライマーW氏がまだ高校生だった頃、当時各牛丼チェーンから次々に登場していた豚丼が結構うまいという話を取材の合間にしたら、彼は開口一番こう言った。

「それ、脂ありますか?」

食いたい盛りの男子高校生でもこれである。フリークライマーにとって肉と言えば、味どうの以前に脂が少ないかどうかの方が、はるかに気になるのである。

そこからさらに昔に遡ることかなり前、まだ自然の岩でコンペを行っていた頃、選手の宿舎になった宿が、「スポーツマンなら肉が好きだろう」と考えたのか、気を利かせて肉メインの料理を出したところみんな残した。なんて逸話もあった。
当時の世間一般の常識と、フリークライマーの常識があまりにもかけ離れていたが故の事故だった。ちなみに最近は炭水化物の摂取をコントロールしつつ(本番前とトレーニング期では摂り方が違う)、肉類をガッツリ食べる人も結構いるから、当時みたいに極端なことにはならないと思う。

そうは言っても、減量期など無駄な油の使用を減らしたい時はやっぱりある。そんなクライマーの端くれの端っこからすでに転げ落ちてしまったオジさんである私が、同じく減量に悩む世間の皆さんに、オレ流の「油を使わない”肉と野菜の炒め物”」の調理法を伝授しちゃるべ。(まあなんと長い前フリだ。)

まずは当然、焦げ付かない加工のフライパン、そして必ず蓋を用意。ガラスで中が見える蓋ならベスト。薄い肉をフライパンにそこそこ丁寧に敷き、火は可能なかぎりの弱火、←これ重要。そして蓋をして待つ。とにかく待つ。じっと待つ。すると、もともと肉の中にある脂が熱で溶けて油として滲み出てくる。普通、肉ならばよほどの赤身でもこうすると油が出てくるものだ、これが普通の火加減だったら焦げ付いてしまうだろう。

後は肉厚と出てきた油の量に応じて火加減を調節しながら焼き、熱を回すために蓋をして火が通るのを待つ。すき焼き用の薄切り肉であればさして時間はかからないし、肉が硬くなるとか縮むとかもあまり気にしなくていい。てか細かいことは気にするな、デブるのとどっちがマシだ、よく噛みゃいいじゃないか(笑)。

そして火が通ったら野菜を投入。しつこいようだが肉が硬くなるのがどうしても嫌なら、火が通ったところで脇にあげておくのだ。野菜を炒める火かげんは、肉から出てきた油の量次第だが、焦げ付きそうに見えたら少し塩を振る。わずかな塩をふるだけで、浸透圧で野菜から水分が出て、焦げ付かないで火が通る。事実上の蒸し焼きだから当然はじめは蓋をしよう。水が多すぎると本当の蒸し焼きになって、炒め物のパリパリ感が完全に無くなってしまうから、もし野菜から水が出すぎたら捨てるか蓋を開けて飛ばしてしまう。可能であれば後半は少し火を強めにするといい感じに仕上がることが多い。

ちなみに、私はやらないが塩の代わりに実は砂糖でもいいらしい、どちらにしても、量は後の味付けを考慮して決めるといい。

以前は私も、少量の水を足して半ば蒸し焼きにしていたのだが、パリパリ感がなくなるのが嫌で、水を減らす方策はないか?と考えてたら、好物のすき焼きを作るときに、野菜から大量の水が出てきて割下が薄くなって困ったことを思い出して、この方法に行き着いた。世の中何が役に立つか本当にわからないものだぴょんでござるだっぺ。