#11

身近な秘境の自然やらクライミングやら音楽やら映画やら諸々を書くと思います。

カテゴリ: 写真、映画、アート

ちょっと前のお話。
ミラーレス化を進めるうちに、一眼レフ用のレンズで使わなくなったものがあったんですが、そんなに悪い場所に保管していたわけでもないのにカビが生えてしまいました。
手持ちのレンズにカビが生えたのは久しぶり、少なくとも二十年?いや三十年ぐらい無かったかも。(アクセサリー類はありましたが)

使ってるうちはここでも生えないんだけどなーとかブツクサ言いつつ(笑)、たぶん使わずにしばらく保管しておくレンズがまだあるので、とうとう電気モノの防湿庫を導入! いやあオジサンは電気に頼るのってなんとなく抵抗があるんですけど仕方がないんですよ。

だって……

レンズ一本のカビ取り代が防湿庫買うのと変わらなかったんで、二本目は勘弁してもらわんと。

最近、黒目を大きく見せるカラーコンタクトレンズがやたらとに流行っていますが、現状では虹彩の部分(茶色の瞳なら茶色いところ)まで黒く見えてしまう製品が多く、そうしたものは人物写真的に非常に良くないので私はお勧めしません。

人は本来あるはずの虹彩がない真っ黒な瞳を見ると、この世のものとは思えない不気味さを感じます。SFドラマやホラー映画でもこの手法はよく使われます。

そもそも人間の黒目の直径は0歳児から老人まで、男女も関係なくほとんど同じと言われます。
人でも動物でも子供が可愛く見える理由は、小さくて丸っこいものを庇護したくなる本能からきていると言う説があり(ぬいぐるみも同じ)、人間の子供も黒目は大人と同じ大きさなので、それを基準にすると子供の顔は大人より小さく見える(実際に小さいし)。逆に顔のサイズを基準にすると子供の黒目は大人より大きく見える(実際は同じだけど)。

詳しい事情は知りませんが、コンタクトで黒目を大きく見せたら、錯覚で顔が小さく、しかも子供みたいに可愛く見えるのでは? と考えた人がどこかにいたのかもしれません。

この黒目が大きいと顔が小さく見えるとか可愛く見える(かもしれない)という現象、つまりベビーフェイス化現象(勝手に名付けた)を狙って、写真を撮る場合に黒目コンタクトを使う人が増えたわけですが、レンズで黒目だけを大きくしても、白目の面積や顔や体全体のバランスが違和感を生んだり、虹彩がはっきりしない不気味さがあり、撮れた写真は違和感のあるものになりがちです。

しかし使っている本人は「可愛くなるはず」という暗示にかかっているので、出来上がった写真を見ても違和感を感じない事があります。そういう方は指摘してもなかなか納得してくれないのですが、元々の知人ならともかく無関係で冷静な第三者からは、良くても「なんか変だな」、悪くすると「よくわかんないけど気持ちわりい」と思われると思ったほうが無難です。

文化にもよりますが、人間が他の人間の顔を見るときにまず見るのが目です。人物写真の基本のキは目にピントを合わせる事です(距離差がある場合は一般的に手前の目)、それもまつ毛ではなく黒目に合っていなければピンボケと言われるぐらいシビアです。それぐらい黒目は見る人にとって「気になるパーツ」なのです。

不気味な異星人顔になったり不自然に受け取られるリスクを承知で、どうしても黒目コンタクトが使いたいという方は、実際に着けて上からの照明や横からの照明でも虹彩がしっかりと見える製品を選ぶべきです(一つの角度で良さそうに見えても別の角度では染料の影が落ちて黒く潰れて見えてしまう場合があります)。

また虹彩の周囲、つまり白目との境界がくっきりとしたものも見る側に強い違和感を与えます、本来の境界は少しぼやけているためです。もしそこに配慮した製品があればそうしたものを選ぶべきでしょう。

このネタ、前にやっていたサイトでも書いたかもしれませんが…。

カメラの外装に金属しか選択肢がなかった時代を除いて、銀塩カメラ時代まではエンプラ(エンジニアリングプラスチック)のカメラが多く、キヤノンもニコンも一度は最高機種にまでエンプラ外装を採用しましたが、今はほとんどエントリー機種しかないですね。

転機は2003年発売で比較的安価にもかかわらず外装にマグネシウム合金を使ったEOS10D辺りでしょうか。それから他社も中級機種にまで金属ボディを使うようになりました。

それもこれも機械マニアの男どもに金属ボディを欲しがる人が多かったからだと思いますが、カメラを磨いて愛でる趣味がない私は、何でも金属という今の傾向には反対です。

プラスチックボディは多少の衝撃ではへこまない。まあ凹みは衝撃が加わった証拠で不具合を事前に察知できるという考え方もあるようですが、へこんだおかげで内部部品と干渉して不具合が起きたり、ゆがんだ外装の隙間から水が入るトラブルもあったりします。

私が考えるプラスチックボディの利点は、軽い事と冬の撮影で冷たくならないことです。一部部品の発熱が大きいデジタルカメラでは、これは廃熱の点で微妙なのかもしれませんが、低温に弱いバッテリーには悪くない話ですし、何より手が冷たくならない事は冬の風景撮影では非常にありがたい事です。

冬の風景撮影で気温がマイナスになると、金属ボディのカメラはまるで氷を握っているように冷えてしまい、機種によっては厚いグローブをしていても辛いです。この点他は金属でもグリップ部分がエンプラだったニコンのD750はよく出来ていました。逆にD800は非常に冷えて手持ち撮影はかなり辛かった。

カメラの強度の点でもしっかり作られたエンプラ外装なら中級機種までのペラペラのマグネシウム外装とは差がないか、エンプラのほうがもしかしたら強いかもしれません。エンプラ外装だったEOS D60(60Dではない)は、持っただけで非常に堅牢とわかる作りでした。キヤノンのカメラであんなにガッシリしていたカメラはEOS-1系以外では記憶にありません。

金属外装には防磁効果もありますから電磁波が特別強い環境では有利かもしれません。ですが電磁波でカメラが誤作動するような環境は軍艦のレーダーの真下とかデータセンターのサーバー室とかぐらいしか思い浮かばず、そうした特殊な用途以外ではほとんど無視できるでしょう。そもそも今のカメラの外装はWifiやBluetoothのアンテナを内蔵するために、どこかしら金属でない部分があるものですし。

少なくとも風景撮影に多く使われる機種は、グリップだけでもいいからプラスチック外装を復活させてほしいです。

ここ数年、元BTO系メーカーがクリエイターPCやゲーミングPCに力を入れている。ここで言うBTO系PCメーカーとは、市販のパーツを顧客の要望に合わせて組上げて売っていた独立系メーカーやショップブランドの事。「た」と過去形なのは、最近は組み立ての域を出て大手PCメーカーよろしくオリジナルパーツを使うメーカーが増えてきたから。しかし実はここに問題がある。

一番の問題はマザーボードがBTO専用のカスタム品の場合だ。
ビジネスモデルでは少ないかも知れないが、ゲーミングモデルやクリエイターモデルの場合は、1~2年も使えばCPUやメモリーをパワーアップしたいと考える事は珍しくないだろう。そんな時に世代的には対応出来るはずの新しいCPUに対応しないとか、機能やツールが使えないといった困った事が起こる可能性がある。なぜならPCメーカーのマザーボード用のBIOS更新ファイルは、新機能の追加ではなくバグ修正などメーカーが最低限必要と判断したものしか提供されないのが普通だからだ。

現状の元BTO系メーカー専用のマザーボードは、マザーボードメーカーの市販モデルをベースにして不要な機能を削除したものが多いようだ。しかしマザーボードメーカーがベースモデル用に提供しているBIOSは適用できない事が多い。その場合は新CPUへの対応などベースモデルと同じ機能向上は期待できない。
また同じメーカーが製造しているにもかかわらず、マザーボードメーカーが提供している便利な設定ユーティリティーも使えない場合が多い。
事実上市販のマザーボードの機能省略版に過ぎないのに、ベースモデルで実現できる最新機能が使えないのは、あまりユーザーフレンドリーとは思えないがどうだろう。

PCメーカーとしては出荷時の構成以外をサポートしたくないのは分かる。だがBTO系のPCを買うユーザーには「ある程度分かっている人」も多く、その手の人ならCPUやメモリーの差し替えぐらいは普通に考えるだろう。そのたびに残念な事になるぐらいなら、少しぐらい割高でも初めから市販パーツで自分で組もうかな? と考える人が出てきてもおかしくはないだろう。

以前であれば組み立てPCはパーツの相性問題で敬遠されることもあったが、相性問題は今ではかなり少なくなり、頻度はメーカーPCと大きな差があるとは思えなくなった。メーカーPCは機種固有のパーツが多いため、ハードの不具合があってもユーザーがパーツを組み替えて凌ぐ事が難しい。今ではむしろ自作PCのほうが迅速で安く対応できる場合が多い。

元BTO系メーカーのゲームPCやクリエイターPCと銘打ったモデルは、高価なCPUとGPUの組み合わせで割安感があるものが多くつい惹かれてしまう。だが基幹部品に専用パーツを使われてしまうと、先に書いた問題が気になって、ある程度の組み立てスキルがある人はあえて自作を選ぶケースも出てくる。

私もこの手のPCでintel絡みのバグ修正を適用しようと最新BIOSを探したが見つからず、サポートに問い合わせても「ホームページのここを見て探してね」というだけで、「いや、そこは先に見てるから……」と苛々状態になった。
この程度の事は自作PCなら数分でアップデートが可能だ。それに何日もかかる時点でもう仕事向きではないなと感じたため、それを機会に先々を考えて使えるパーツを流用し、市販のマザーボードで組み替えた。※ちなみにWindowsのライセンスは余りがあるので。

BTO系メーカーPCには最初に導入するときのお得感がある。しかし後に困った事が起きて次回の購入を躊躇する人が増えればメーカーだって困るのではないか。パーツ交換が容易というのは高価なCPUやGPUを使うゲーマーやクリエイターなどのヘビーユーザーには大きな魅力だ。市販マザーボードをそのまま使ったモデルの復活を考えてもらいたい。

同じ絡みでは中古マザーボードにも注意が必要だ。こうしたBTOメーカー向けのマザーボードは中古市場でも流通している。一度に大量に出回るのでリース落ちをバラしたものが大半かと思うが、補修用部品だったのか中には明らかに未使用なものも見かける。
マザーボードメーカーの名前入りで市販品とよく似た型番がつき、しかも良品とくれば細かく確認せずに買ってしまう事もありそうだが、先に書いたようにマザーボードメーカーではBIOSを提供していない。

ならPCメーカーのBIOSはどうかと言うと、あるメーカーではBIOSファイルを入手する際にPC本体のシリアルナンバーを必要とする。このメーカーがもし最低限必要なBIOSを提供してくれていたとしても、中古マザーでは本体のシリアルナンバーが無いため入手ができないから注意が必要だ。

201712d一日空いたので今シーズン入ろうかなと思っていたところを日帰り偵察。

今年はまあまあ雪が早めで、この日あたりがたぶんギリギリで後日出直しではもう無理っぽい。この後数日晴天が続けば標高の低いところは一旦融けますが、そんな予報じゃないですし、また来年かなあ。※追記-案の定、数日後大寒波襲来で完全にアウト

余談ですが、今一般的なハイブリッド車はエアコン(冷暖房)を入れると夏だけでなく冬も燃費が伸びません。これをスタッドレスタイヤのせいだと勘違いしている人が案外多いですが、今時のタイヤは優秀なのでスタッドレスのせいで気になるほど燃費が落ちたりはまずしません。

ハイブリッド車の燃費を伸ばすには、独特のアクセルワークを憶えてモーターで走る時間を増やし、車になるべくエンジンをかけさせないことですが、暖房をつけると熱を得るためにエンジンが頻繁にかかるので燃費が悪化します。ハイブリッド車は高速道路ではほとんどエンジンがかかりっぱなしになるので燃費が落ちますが、例としては少し極端なもののそれをイメージすると分かりやすいかも。

低燃費命の人なら、夏ならエアコンを止めて窓を開けると言う手がありますが、冬は着ぶくれするしかないわけです。夏は「風を感じている」と気取るか「冷房が苦手で…」と大ウソぶっこけるわけですが、冬の着ぶくれは車に乗ってる気がしないし、いくら着込んでも脚先は冷たいから結局暖房は入れてしまうわけで。つまり現状のハイブリッド車の燃費は夏より冬のほうがよっぽど問題なわけですよ、低燃費マニア的には(笑)。

仕方がないのでいろいろやってみましたが、今乗っている車の場合は暖房の設定温度を25度以下に抑えるとまあまあの結果になります。さらにオートを解除して送風量を下げるとかえってイイ感じに温まる気がします。それでもガラスの曇りを押さえるために外気導入にしている場合は、外気温が4~5度を割ると燃費がかなり落ちてきます、たぶん内気循環と違って外の冷たい空気を温めるせいでしょう。雪国で外気温マイナス10度以下とかの中で走っていると、もうなすすべ無しのお手上げです。

3他にやってる人がいるかは知りませんが、この結び方は知識として紹介しておきましょう。バックルが割れたり無くしたときにも使えるでしょう。緩んだりすっぽ抜けないように結ぶにはそれなりに慣れが必要で、推奨はしませんが、もしやりたい方はくれぐれも自己責任で、これでカメラを落としても私は一切関知しませんのでそのへんよろしく。

簡単に言えば、テープ結び(リングベンド)で、カメラの吊り環に直接テープを結んでしまう。テープがしっかり結べる素材で、結び目の緩みをチェックする習慣さえつければ固定は強力。ただし長さは調節できないが、これはネット界隈で俗に言われる三重折の「プロ結び」と同様。

テープ結びは平たいテープ同士を連結するときに使う結び方で、クライミングでは主に一本のクライミング用テープの両端を結んでテープスリングと呼ばれる輪を作る時に使われる。昨今はソウンスリング(テープをミシンで縫って連結した輪)が主流なので、若いスポーツクライマーにはこの結び方を知らない人もたまに存在するが、山ではダブルフィッシャーマンズノットやプルージックなどと同様に、知っていないとまずい基本的な結び方の一つと言える。

この結び方は表面に十分な摩擦力がある素材でできたテープで使えるが、一応注意だけしておくと、ダイニーマ(スペクトラ繊維)のように使ってはいけない素材も存在する。メリットは結び方が非常にシンプルで、カメラをバッグに仕舞ったときに、硬いバックルがカメラやレンズを擦ることが無い。バックルの破断を心配する必要がまったく無い。ベストの状態であれば固定が非常に強固なことなど。

おまけでもう一つ応用編。

2この二本のテープを一つのリングベンドで結ぶことで連結してしまう。カメラ側のテープが痛んだら、そちらだけ交換できる。

二本の別々のテープを一つの結び目で連結した結び方。キヤノンのEOSのように吊り金具の折り返し部分でストラップのテープが痛みやすいカメラの場合、この結び方だとカメラ側のテープが痛んできたら、そのテープだけを交換できる。

テープは強く結べばそれだけでそれなりに痛むからどちらにしろ寿命はあるのだが、ストラップのテープを直接結ぶよりは長く使えるような気がする。

1デメリットとしては、三本のテープを結ぶので、結び目が大きくなることがあげられる。他にも少しでも緩んでいると解けやすいはずなので、最初に結び目を入念にしっかりと締めて、その後も使いながら締まり具合を確認したほうが良い。滑りやすいテープでは結べても滑って抜ける可能性がある、硬いテープでは結目がしっかり締まらず抜ける可能性がある。ストラップ側テープを内側に通すのか、外側に通すのかで強度が変わるかもしれない。などなどを正しく理解して使うかどうかを決める必要がある。

三枚目の写真はそのバリエーションで、カメラの吊り環側、三枚重ねのテープの真ん中に、ストラップ側テープの末端が挟まれてブラブラしない結び方。この結び方は実は結構難しいうえに強度も何とも言えないが、もし人間がぶら下がるならこれは絶対に使わないが、カメラなら使うといった感じだろうか(そもそもカメラ用テープじゃそこまで強く無いわけだが)。もしやるとしてもテープ結び(別名:リングベンド、テープヒッチ、テープノット、ふじ結び、等)を検索して、よく研究したほうがいい。通常のテープ結びでもそうだが、この結び方の末端(端で余ったテープ)は長めにとっておくこと。私はテープ結びでもバックルを使う場合でも、余った末端を熱収縮チューブを使ってまとめている(ただし収縮固定はしない、増し締めができるし)。

4ぶら下げるとこんな感じ。少し腹が出て見えるかもしれないが、食べ過ぎたのは最近続いたストレスのせいなので、ストレスを減らすために寿司を食べたからもう大丈夫だ。

ちなみに、私が近年愛用しているARTISAN&ARTISTの長さが自由に変えられるストラップ(Easy Slider ACAM-E38)は、テープ部分がとても短いので、カメラ直付けではテープ結びができず、二番目に紹介した連結法で結んでいる(もうちょっと長くならんかね、これ)。

もひとつちなみに、私は自分で結んだこの結び方なら、たとえライカであろうとも、ストラップを持ってハンマー投げの要領で振り回せる度胸があるが、普通のバックル式だったら絶対やれない。(あるのは度胸で強度とは言ってないぞ〜)


会津田代山登山道途中にある小さな湿原「小田代」(写真は昨年12月)、田代山頂上湿原(記事はこちら)から500mほどの場所にある。このときはガスが切れて晴れていた。太陽のすぐ右側奥の尾根に、チラッと白く見えているところが山頂の一部。

今回は全天球カメラ、RICOH THETA Sを雪山で使用してみて感じたこと。私は静止画でしか使用していないのでそれが前提で、前半はTHETA Sの使用感、後半は全天球カメラの注意点と可能性について。

露出
自動露出はよく練られた分割測光のようで雪山でも安定している。大抵の場合はそのままでも問題なさそう。

AWB
場の雰囲気を残せてかなり優秀だと思う。周囲を全て写し取るおかげで、逆に普通のカメラのAWBのように、ちょっとしたフレーミングの違いで結果が大きく異なる心配は、あまりしなくて済みそうだ。

しかし…
ここまでは記念撮影レベルでのお話し。夕景や雪山の日陰など、色温度設定の難しい条件で、真面目に記憶色を再現したいと考える人や、作画意図に合わせて画像をコントロールしたい人は、RAW記録の必要性を感じるだろう。

全天球カメラの場合、アウトドアでは高輝度の太陽から暗い日陰まで、周囲のすべてが一枚の画像に写り込むため、画面内の輝度差が大きく、JPEGからでは露出や色の軽い調整でも、調整可能な幅が通常画像よりも実感としてかなり狭い。また調整によっては画像の繋ぎ目に色がつき、浮き出てしまうこともある。先ごろのファームアップでHDRには対応したが、RAW記録にもぜひ対応して欲しい、次機種でもいいからこの点には強く期待したい。

操作性
Wi-Fiを使わないスタンドアロンの状態では全自動のみだから、操作性も何も無し、レリーズボタンを押すだけ。ツライチのレリーズボタンは素手向きで小さく、手袋をしたままではうまく押せない。位置もほぼ親指専用で、人差し指で押したい私にはかなり押しにくい。ケーブルレリーズが無いことが残念。

しかし…
スマホ等とWi-Fi接続しないと設定変更ができないのはやはり不便。デジタルガジェットとして外観デザインにこだわるのもいいが、バッテリー残量やメモリーの状態がいつでも一目で分かるインジケーターが本体にあるといいし、せめてmicroSDXCは使えるようにして欲しい。

外部機器との連携
・現状では基本スマホとしか連携できない。スマホだけでなくPC/Macでの操作やカスタマイズも可能にして欲しい。(Windowsタブレットも含む)

・スマホを使わずにボタンを押すだけの、ケーブル式かワイヤレスの単体レリーズが絶対に欲しい。簡易的でいいからタイマーレリーズやいわゆる 2秒レリーズ機能がついているとなおいい。スマホだけに頼る現状は非常に不便。そもそもスマホアプリのボタンは当然手探りでは位置がわからず、撮影者は常に位置を気にしているから、三脚に据えたり自撮り棒につけて自分も映り込む撮影では、撮影者が下を向いてスマホを凝視していたり、目が泳いでいたりと変な画になりがち(笑)。(※先日本体にセルフタイマー機能が追加されたので、このへんは少しだけ楽になりそう)

・パソコンとの有線接続は、簡単にストレージモードに切り替えられるようにしてほしい。ソフトを通すよりもオリジナルデータを目視で直に扱うほうがトラブルが少ない。ストレージモードで繋ぐことは現在でも可能だが裏技操作が必要でいちいち面倒。

・譲渡や廃棄の場合を考えて、本体のデータを確実に消去する手段をメーカーが提供するか案内したほうがいい。それが面倒ならやはりメモリーカード式にすれば話は簡単。

UI全般
またこれは最近のスマホやタブレットを意識したOSやアプリと同じ傾向だが、アプリもホームページもUIを簡略化しすぎて理解が難しい。このへんに、おもてなし精神が希薄な米国iT業界の影響を感じざるをえない。個人的に「マーケティングが海外志向すぎるのでは?」と思っている。

それと、TwetterかFacebookに登録していないと使えないシステムはダメ。世の中には私のようにSNS嫌いの人間が今も大勢いるので。

※私はけしてこうしたものに弱いわけではなく、前世紀からインターネットをフル活用しているような人ですが、SNSは情報収集にしか使わず、Twetterが「馬○発見器」と言われるようになる前から、いち早くその可能性に気づき、発見されないよう見るだけにしている。

これまで経験したトラブル等

○水平の問題
撮影時にカメラが傾いていたとき、傾きが記録されているので、本来ならビュアー側で補正されるはずなのだが、ある程度以上傾いていると補正しきれない場合があるようだ。公式サンプルにも同じように歪んだものが見られる。また、稀に補正そのものがされない場合もある。

○Wi-Fi
登山途中でWi-Fiがうまく繋がらなくて、リモートレリーズができないときがあった。おそらく周囲数キロにわたって誰もいなかったはずで電波干渉は考えられないし、低温のせいかと思ったが、もっと寒い山頂ではスムーズに繋がったので原因は不明。

○充電
モバイルバッテリーと相性があるらしく、まったく充電できないものもある。よくあるアンペアの問題とも違うようで、充電開始のタイミングに癖があるのかもしれない。旅行等に持って行く前には手持ちのバッテリーとケーブルで事前にテストをしたほうがいい。

○ケース

2THETA Sの付属ケース(シース)は、冗談みたいだがサイズが小さくて本体が入らない。ネット上のレビューでは他ユーザーも同じようで、今の所は別のものが必須だが、市販品の大抵はデザイン優先で、レンズをしっかり保護し、不用意に本体が抜けないが、取り出したいときには簡単に取り出せるという、アウトドアでの使用に耐えそうなものはほぼ見当たらない。今の所100円ショップでも見かけるネオプレイン風の小物ポーチが使い易い。

○PCサイト
現状のtheta360.comはとてもわかりにくい。先にも書いたがデザイン重視で理解しにくく、リンクをたどってでは必要なサポート情報にたどり着けなかったため、Googleで検索したらあっさり出てきた。これも最近の米国メーカーのサポートサイトなどでよくある現象。悪いところまで真似しちゃいけない。

総評と今後の期待
THETAシリーズは画質が向上したSの登場で、旧型までの「新しい玩具」的な立ち位置から、今後は新ジャンルの表現ツールとして、またすでにあるように不動産のバーチャル内見のような産業用途に至るまで、ユーザー先行で進化していくと思う。

最近続々と発表されている競合製品と比べても、「携帯性」と「手持ちで撮り易い」という点で、山岳用途には抜きん出た存在だ。それだけにレリーズが無い、まともなケースが無いなど、残念な部分は早急に改善してほしい。

全天球カメラがまだニッチなツールである以上、メーカーがそうした尖ったユーザーの要望に、いかに丁寧に対応できるかが、競合製品との競争に勝てるかどうかの鍵だ。この点はアクションカムの出だしの頃に似ている。なぜ既存の大手メーカーではなく、GoProがスタンダード化したのかを考えれば今後の道標になると思う。メーカーの努力に期待している。

風景の視点選びと撮影のコツ
写真撮影からフレーミングを無くすということは、ときに写真家の存在意義を毀損しかねない困ったことでもあるのだが、それだけに場の雰囲気をそのまま素直に伝えるには、これ以上のものは今のところ他に無いだろう。

しかし実際に使うと、どこで撮るか? どの高さで撮るか? の違いで、得られる画が下手なフレーミングの違いよりも大きく変わることがわかる。この点で特に自然撮影では写真家の存在意義はこのカメラでも大きい。
遠くの被写体を狭い範囲に作為的に切り取る通常の風景写真では、視点の高さの僅かな変化は、写真を見る側にとっては、あまり意識されない一要素にすぎないが、写真の構成要素がほとんど「視点の場所と高さ」しかない全天球カメラでは、この高さの僅かな違いが全体の印象を大きく左右する。

実際の撮影で注意する点としては、たとえ風景でも見晴らしを良くしようとカメラの位置を頭よりあまり高く上げすぎると、不自然な画像になりやすい。一般的にはやはり人間の視点の高さから大きく離れないほうが、見る側に違和感を感じさせないで済むようだ。

かといって、山岳風景の場合は視点が人間の背丈程度に低いと、どうしても山が上すぼまりになって、肉眼で見るよりも、大きさや山と山の重なりなどがわかりにくくなる。(例:ウメコバ沢の一枚目)この点を根本的に解決するには、向かいの山に登るとか超長い一脚にでも付けるか、はてはドローンで飛ばすとか、物理的に視点を高くする以外に方法は無いかもしれない。ただこれにも視点が高い空間に浮くという違和感がつきまとう。

これがもし風景写真の主流になってしまえばわからないが、そうで無い今は見る側にとっては「空撮」の印象になってしまうだろう。そもそもドローンが思い切り写り込んでしまうし、下には何もない。「地に足がつかない」感覚を、見る側がどう受けとるかは、現状ではまだ未知数な部分がある。

そうした特殊な手段を使わずに、地面に立ったままで、こうしたパースに関係する違和感を少しでも緩和する簡単で実用的な手段としては、少し離れたところに人や誰もが大きさを知っている物体を写しこむことだ。これにより見る側が全体の大きさや距離感を推察しやすくなり、写真から受ける不確定(もしくは不安定)な印象が薄くなるうえに、次に説明するように写真にリアリティを生む。

そのままではリアリティが薄い
全天球カメラを使って、あらためてわかったことがある。
これまでの風景写真では、画面から撮影者の存在は可能なかぎり排除されてきた。しかし実際には、見る側に常識的に「撮影者の視点で撮られている」という前提があったことで、写真そのもののリアリティが補完されていた。

つまりその場所を選び切り取ったのが人間であり、画面の外には撮影者がいると誰もがわかっているから、写真から受ける印象も実際に写っている以上に現実的=リアルに感じるということだ。もう少し簡単に言い換えれば、そこに撮影者の作為があると見る側も承知していることが、写真から生々しさを感じる結果になっていた。

全天球カメラの画像は、従来の写真と比べた場合、フレーミングという大きな作為が無いため、人が陰に隠れて写り込んでいない場合は、見る側にとっての視点は限りなくいわゆる”神の視点”に近づく、そのせいか画面に人や動物のような、生きて動いているものの一切入っていない画像は、リアリティが奇妙なほど薄い。

たとえ生き生きした緑が写っていたとしても、ゴーストタウンを見ているような感覚に陥ることさえある。ところが画面に人(たとえ頭のてっぺんだけでも)が入ることで、同じ風景でも急にリアリティが生まれる。

昨今、巷で全天球カメラを使う人で、一生懸命自分が映らないように影に隠れている人をたまに見かけるが、もし特別な意味が無いのなら、そう無理をしないでいいと思う。むしろ普段は積極的に写りこんだほうがいい。私みたいに写真家なのに撮られるのが苦手な人にはこれは困ったものだけど(笑)。

地味だが非常に大きな革命
こうした意味で、全天球カメラによる風景写真は、撮影者の存在を可能なかぎり排除してきたこれまでの風景写真とはまったく異なり、撮影者が積極的に風景の一部になることが望ましい、常識を変える写真なのかもしれない。

(2016 7月追記: 先日のファームアップでTHETA SがケーブルスイッチCA-3に対応、さすがRICOH。)

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